「同性生殖」でキタシロサイの絶滅回避

第2部 生命科学

神への挑戦から

[出典 毎日新聞朝刊記事第一面]

概要をまとめる。

ケニアで保護されているキタシロサイは、現在母娘の2頭のみが生存している。普通で考えれば、もう絶滅も時間の問題である。

そこで、絶滅を救おうと、最新の生命科学を駆使する国際プロジェクト「バイオレスキュー」が進められつつある。

キタシロサイは、1960年代にはアフリカ中央部に2000頭以上が生存していた。それを人類が密猟して漢方薬や装飾品としたため絶滅危惧種になった。

母娘2頭しか生存していないのに、どうやって子供を作るのか?

具体的にはiPS細胞の不安定な性質を利用することである。iPS細胞には性染色体のXとYのペアが含まれているが、その細胞の培養中にYだけ欠けた性染色体が1〜5%の割合で生じるという。その異変*を利用する。

それは、まだ生殖能力のある娘の卵子とすでに死んでいる雄から得た凍結精子を利用する方法や体細胞を使って人工的に繁殖させる方法を用いることである。

そのテクノロジーの鍵を握るのがプロジェクト参加者の林克彦・大阪大教授(生殖遺伝学)である。

林教授は2023年3月の英科学誌ネイチャーにマウスを使った実験で、世界で初めて雄同士から子供を作ることに成功し、論文を発表した。

これを利用して生まれたマウスに異常が見つからなかった、というものである。

研究の詳しくは述べきれないが、結論として雄と雄のiPS細胞から子孫を残せるということをマウスで実証したのである。

教授は、まだまだテクノロジーとしては3号目当たりで、難しい課題も残っているという。が、キタシロサイの繁殖の可能性はあるのではないか。

人についてはどうだろう。法律的には人の細胞での受精は禁止されているので、まだまだ実験には法整備が追いついていない。

尚、教授の果たした成果は世界を驚かせ、米タイム誌が今年の「世界で最も影響力のある100人」に名を連ねることになった。

身寄りなき老後 国が支援制度

日常生活から死後対応まで 試行へ
▶︎身寄りがない高齢者の困りごと◀︎
  • 入院時などに頼れる親族がいない、
  • 認知症になるとお金の管理が心配、
  • 遺言を残したい、
  • 葬儀や納骨をしてくれる人がいない、
  • 死後の家財の処分はどうすれば?(自治体相談窓口の事例から)

👁️‍🗨️ 政府は市町村の一部で上記で示す「困りごと」の支援対策を試行をしながら、全国的な新制度の検討を始めた。

核家族、少子高齢化問題を考えれば自然の成り行きである。日本総研の澤村香苗研究員は「身寄りのない高齢者の支援はこれまで受け皿がなく『隙間』と言われており、画期的だ」と評価している、という。[タイトル|朝日新聞]

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