トランプ政権の「ドルコイン戦略」はビットコインに何をもたらすのか?

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今朝の日経新聞主要記事から考察 / トランプ政権の「ドルコイン戦略」はビットコインに何をもたらすのか

■ はじめに

2025年、再び政権復帰を目指すトランプ陣営が、仮想通貨政策においても大胆な構想を打ち出している。注目すべきは、米国債を裏付けとするステーブルコインの法制化と、その市場拡大である。

報道によれば、この政策は「クリプトダラー(*1)」を中核に据え、ドルの覇権を仮想通貨世界にも及ぼす狙いがあるという。


本稿では、この動きが非中央集権型であるビットコインにとって脅威となるのか、それとも追い風となるのかを多面的に考察する。

(*1)クリプトダラーとは、暗号資産(仮想通貨)の技術を用いて発行される、米ドルの価値に連動したデジタル通貨のことです。一般には「ステーブルコイン(Stablecoin)」の一種とされ、米ドルと1対1で価値を保つよう設計された仮想通貨を指します。


なぜ「クリプトダラー」が注目されるのか?

▶︎送金・決済のインフラ革新(銀行を介さずに瞬時にグローバル送金)、

▶︎新興国のドル需要に対応(自国通貨が不安定な国で利用される)、

▶︎米ドルの支配力を拡張(ブロックチェーン経済圏にもドルが進出)

■ 「ドルで支配する仮想通貨」構想とは

トランプ政権が成立を目指す新たな仮想通貨法案では、「1コイン=1ドル」に固定されたドル連動型ステーブルコインの制度設計が進行している。この「ドルコイン」は米国債によって裏付けられ、ドルの信用力と即時決済機能を併せ持つ。

ベッセント米財務長官は、「基軸通貨ドルの優位性を固める」と下院公聴会で明言した。これは1950年代のユーロダラー、1970年代のオイルダラーに続く、「ドル支配の第3幕」とも言える戦略である。

■ ステーブルコインの普及はビットコインに不利か

ステーブルコインが今後、2兆ドル規模にまで拡大すれば、価格が安定し、決済・送金コストが限りなくゼロに近い通貨として、国際的に広く流通する可能性が高い。

このような利便性の高さゆえに、日常利用や越境送金においてビットコインを利用していた層がステーブルコインに移行する事態も想定される。
つまり、実需の一部を奪われる形で、ビットコインの優位性が一時的に薄まる恐れがある。

■ しかし、逆風ばかりとは限らない

一方で、ステーブルコインの法制化は、仮想通貨経済全体の“制度的インフラ整備”を意味する。

明確な規制枠組みの中で運用されることで、仮想通貨への信頼性が向上し、結果としてビットコインやイーサリアムなどの非ステーブル型暗号資産への投資促進につながる可能性がある。

さらに、ドルによる仮想通貨支配の動きは、「政府・中央銀行に依存しない通貨」というビットコイン本来の価値観をあらためて浮き彫りにする。
そのため、中央集権型通貨へのカウンターとして、ビットコインの思想的価値が再評価される土壌が整うことにもなろう。

■ ステーブルコインの実用化が進行することによるビットコイン価格への影響

以下は、これから起こるかもしれない出来事(通貨革命シナリオ)ごとに、ビットコインがどんな影響を受けるか、まとめた。

  • 決済・送金需要の一部喪失▶️短期的には弱含み
  • 仮想通貨全体への法整備が進展▶️投資安心感から中期的に価格上昇圧力
  • 「ドル支配」への反発が顕在化▶️ビットコインが思想的通貨・逃避資産として再評価
  • 地政学リスクや金融危機の再発 ▶️「デジタル・ゴールド」としての価値が強化される

■ 結論:分散と中央のせめぎ合いの中で

トランプ政権が描く「ドルによる仮想通貨支配」は、国家が仮想通貨の覇権を取り戻そうとする試みであると同時に、ビットコインのような非中央集権型通貨の存在意義をあらためて浮き彫りにする現象とも言える。

短期的には、ドル連動型通貨の拡大によりビットコインの立場が相対的に弱まる可能性があるが、
中長期的には、制度整備による市場の信頼感向上と、中央集権への懐疑からの再評価という二つのベクトルが交差することで、ビットコインはむしろその存在価値を深めていくであろう。

仮想通貨の未来は、分散型の理想と中央集権の現実の間で、いかにバランスを取り続けるかにかかっている。

【メモ】仮想通貨取引所のCoincheckサイトでチャートを見ると2日前から値下がりが始まり、今日は持ち直しつゝある。下げつつも、様子窺いの現在の姿勢が良く現れている。ニュースになった時は、すでに顕在化し、そのニュースはチャートに織り込み済みである。