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序
日本の戦後80年の歩みを「政治」「経済」「社会文化」「国際関係」の4分野に分けて調べた。それは私自身が80年間生きてきた年代とピッタリ重なるのであるが、狭い視野で戦ってきたので、知らないことも多々ある。この際、人生100年時代に挑戦する参考としたい。
Ⅰ.戦後復興と独立回復(1945〜1950年代)
敗戦によって焦土と化した日本は、GHQ(連合国軍)の占領下で徹底的な民主化を進めた。
1946年の日本国憲法公布は、象徴天皇制・平和主義・国民主権という新しい国家理念を定め、戦前体制との決別を示すものであった。
一方、経済は混乱を極めたが、1949年のドッジ・ラインによる財政再建、1950年の朝鮮戦争特需が復興の原動力となる。
講和条約(1951年)によって主権を回復し、翌年には建前上、占領が終了。
同時に日米安全保障条約が結ばれ、以後の日本外交の骨格が形成された。
1955年、自民党結成により「55年体制」が確立。
これが長期的な政治安定をもたらした一方、保守体制の固定化も生じた。
Ⅱ.高度経済成長と国際復帰(1960〜1970年代)
1960年、日米安保条約の改定をめぐって全国的な安保闘争が発生した。
政治的には混乱を招いたが、これ以降、国民の政治参加意識が高まった。
池田勇人内閣の「所得倍増計画」により経済は飛躍的に成長し、1964年の東京オリンピックと新幹線開通はその象徴となった。
「もはや戦後ではない」という経済白書の言葉どおり、日本は経済大国の仲間入りを果たした。
1972年には沖縄返還と日中国交正常化が実現し、外交面でも大きな転換期を迎えた。
しかし、1973年の第一次オイルショックは高度成長の終焉を告げ、省エネルギーと安定成長の時代へと移行する契機となった。
Ⅲ.成熟と転換、バブルから「失われた10年」へ(1980〜1990年代)
1980年代は、経済的繁栄と政治改革が並行した時代である。
中曽根内閣は「戦後政治の総決算」を掲げ、行政改革・国鉄民営化などを実現した。
1985年のプラザ合意により円高が進行、これを背景に資産バブルが形成された。
やがて1991年のバブル崩壊で経済は長期不況に陥り、「失われた10年」が始まる。
政治面では1993年、自民党が下野して細川連立政権が発足。
選挙制度改革により、小選挙区比例代表並立制が導入された。
一方、社会では1995年の阪神淡路大震災と地下鉄サリン事件が発生し、国家と社会の脆弱性が露呈した。
Ⅳ.構造改革と災害・国際化の時代(2000〜2010年代)
2001年、小泉内閣が誕生し「聖域なき構造改革」を掲げて政治主導を打ち出した。
郵政民営化はその象徴的成果である。
2008年のリーマン・ショックで世界経済は混乱、翌年には民主党政権が誕生し、戦後初の本格的政権交代が実現した。
しかし、政権運営の不安定さから短命に終わり、2012年には安倍政権が復活する。
2011年の東日本大震災と福島第一原発事故は、エネルギー政策と防災体制を根本から見直す契機となった。
安倍政権はアベノミクスで金融緩和と積極財政を展開し、経済回復を図った(*1)。
2015年には安保法制が成立し、戦後安全保障政策の転換点となった。
(*1)安倍政権は「積極財政」を掲げながらも、実際には金融緩和に偏重した政策運営に終始した。ゼロ金利政策のもとで一定の安定効果は得たものの、政府による十分な財政出動が伴わなかったため、デフレ傾向を抜け出せず、実質GDP成長率は長期にわたり低迷した。金融政策のみで持続的な経済成長を実現することは困難であり、いわゆる「失われた30年」を決定づけた要因の一つである。背景には財務省の緊縮志向や政治的制約など複合的な要素が作用していた可能性がある。
Ⅴ.コロナと地政学の時代(2020〜現在)
2020年、新型コロナウイルス感染拡大により世界が混乱する中、安倍首相が退陣し菅内閣が発足した。
パンデミック対応とデジタル改革が急務となる一方、経済停滞と社会分断が進んだ。
2021年に岸田文雄内閣が誕生し、「新しい資本主義」を掲げて格差是正と再分配を重視する政策へ舵を切った。
2022年のロシアによるウクライナ侵攻は、日本のエネルギー・安全保障政策を根底から揺さぶった。
近年は物価上昇と賃上げが同時進行し、30年ぶりにデフレ脱却の兆しも見える。
2025年には大阪・関西万博が予定(終了)されており、「持続可能社会」実現への挑戦が注目されている。
まとめ:80年の軌跡とこれから
戦後日本の歩みを振り返ると、
①敗戦と再出発
②高度成長
③安定とバブル
④失われた時代
⑤再構築と変革
という五段階に整理できる。
政治・経済・社会・国際のすべてが相互に影響しながら、現在の日本を形づくってきた。
これからの課題は「成熟社会の再設計」であり、少子高齢化や地球規模の課題に対し、再び新しい成長の哲学を問われている時代である。
✳️ この内容は「戦後80年を振り返る」シリーズの導入編として、今後は各分野(政治・経済・社会・外交)を個別に掘り下げる予定である。

