さて最初の体験は散々な目に遭ったものだったが、一応は無事に終えたのであった。その後、何回か案件を当たってみたが、実際はなかなか当選(契約を取ること)しなかった。何遍タッチしても他の人に仕事は流れてしまうのだ。口コミでもそのようなコメントが多かったのは事実であった。1番最初に偶然に苦も無く決まったのは幸運だったようだ。
仕事にありつく、つまり「当選する」仕組みは、以下のようなものであった。
まず案件をみて、応募する(スマホの画面をタッチ)と、配送元が運転手の経歴や車種を判断して依頼するかどうかを決める。そこで選んで貰えば、運送案件の受注が決まる。実はそれが簡単ではなかったのであった。
なお、一旦決まった案件は、応募した責任上、基本的には受けなければならない。そうしないと、評価が下がる。ドライバーの評価点は、顧客に示され発注の参考にされる。いいドライバーには一定の顧客の指名がある。
私が一生懸命に頑張っていた頃は、都内のドライバーの評価順位は確か最高で50番前後だったと記憶している。1000人以上いるわけなので、相当に頑張っていたことになる。
しかしある時、出発のタイミングが遅れ、さらに現地に荷物を引き取りにいったはいいものの、その場所がさっぱりわからない。場所を探すのに必死で、油汗を流した。お客からも電話が来る、会社の管理担当者からも電話がかかってくる。広ーい店舗の中のお店だったのだ。そんなのどうやってわかるのか!と思っても仕方ない。不運は起きる。守衛に聞いて目処をつけ、何とか見つかって運送は終えたものの、その時に、一時的にお客の怒りを買ってしまい評価がぐっと下がった。
住所はわかってGoogleマップでは現地まで行けるのだが、込み入っている場所では目的の場所に届けることが非常に難しい。遅くなって始末書を書かされたりしたこともあった。
この頃は、まるで運動会のように走り回っていたこともある。運動が好きなのでいいのだが、年齢も関係あるのだろう、足腰は若い頃のようには鍛えが効かなかった。若い頃なら、もりもり力が湧いてきたものだが、鍛えても足に力が入らない。ふと、これは長くできない仕事だな、と思った。が、運転自体は楽しいものだった。あちこち眺めながら冒険家のような気になったものである。