[赤字国債の通貨発行の違い ]シリーズ二回目
コペルニクス的発想転換が求められている時代

シリーズ第一回目(前回)の記事「赤字国債と通貨発行の違い」に続くテーマとして、現代貨幣理論(MMT)における「税金の本当の役割」を解説します。
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税金は“財源”ではない?──MMTが教える「税の本当の役割」
多くの人が、以下のように考えていると思われます。
「政府の支出は、税金でまかなっている」
「税収が減ると、財政が苦しくなる」
「だから、社会保障や教育の拡充には増税が必要だ」
一見もっともらしく聞こえますが、現代貨幣理論(MMT)の立場から見ると、これは根本的な誤解を含んでいます。
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MMTの前提:「お金をつくる主体」は政府である
まず大前提として、MMTは「政府は自国通貨を発行できる存在だ」から出発します。ポイントは政府はお金を“集めて”使うのではなく、お金を“先に使って”、あとで税金で調整するという構造であることです。これをスペンディングファーストと呼びます。
私たち民間人や企業、自治体には「お金を稼いでから使う」という制約がありますが、政府には通貨発行という手段があるため、同じルールでは語れません。
――これは知られたくない、何か大変なことになりそうな気がする(インフレ恐怖など)と思う人もいるかもしれない、、、👉 しかし、真実は明かされる。いずれは国民にあまねく知れわたることとなり、新しい時代が幕を開ける。が、さらに言えば、完璧はないので、問題は残り、さらなる進化の時期はやってくる――
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税金は“財源”ではなく“制御装置”である
では、税金は何のためにあるのか?
MMTでは、税の役割は以下のように整理されます:
税の役割
① 貨幣の価値を裏づける 「税を円で払わなければならない」という仕組みが、円に価値を持たせる
② 過剰な需要を吸収する 通貨を発行しすぎてインフレになりそうなとき、税でお金を回収して需要を抑える
③ 所得の再分配 格差を是正するため、高所得層から多く取り、低所得層に公共サービスとして還元する
④ 社会的行動の誘導 環境税や酒税など、人々の行動をコントロールする手段
つまり、税金は「政府が支出するためのお金を集める」ためではなく、経済全体を安定させるための“ハンドル”のような役割を果たしているのです。
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よくある誤解:「税が足りないと支出できない?」
たとえば、「子育て支援を拡充したいけど、財源がないからできない」という話を聞いたことがあると思います。しかし、これは通貨主権を持つ国では根源的におかしな話です。
政府が支出しようと思えば、通貨を発行して支出することは可能です。問題は、その支出がインフレを引き起こすかどうか、社会的な合意があるかどうか、なのです。インフレを起こすかどうかは、供給力である生産力によりますので、比較的容易であるかもしれません。一方、社会的な合意とは国民がその使い道に納得するかどうかです。
なぜ社会的合意が重要か
① 民主主義の原則があるから
→ 国のお金の使い道は、国民みんなで決めるべきもの。
→ 通貨発行の力も「国民から預かっている権限」だから。
② 通貨の信用(信任)を守るため
→ 国民が「納得できない使い方」をすれば、円の信用が下がる。
→ 信用を失えば、インフレや円安の原因になりかねない。
③ 公平性の問題があるから
→ 支出には「誰が得をするか」「誰に恩恵が届くか」がある。
→ 特定の人や地域だけが優遇されると、不満や分断が生まれる。
④ 未来への責任があるから
→ 今の支出が将来の社会にどんな影響を与えるかを考える必要がある。
→ 合意があることで、将来世代に説明できる財政になる。
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このように、通貨発行の「技術的な可能性」だけでなく、それを「どう使うか」は政治的・社会的な合意の上に立つべきものだというのがMMT的な考え方です。
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「財源がない」は政治的なレトリック
日本のように低インフレ・低金利が続いている国において、「財源がないからやらない」という言葉は、実はやりたくないことへの言い訳である場合が多いのではないか。
本当に「子どもに投資する社会」や「持続可能な福祉国家」を目指すのであれば、税をあてにせずとも、支出は可能だからです。
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だからこそ、税の設計は「公平さ」と「目的」で考える
MMTの視点から見ると、税の最大の論点は「財源」ではなく、
• その税がどんな目的で設けられているか
• 社会にどんな影響を与えるか
• 公平で、納得感のある制度か
といった観点になります。
「誰から、どれくらい、何のために税を取るのか」
この問いが、今後の税制改革の出発点になるべきです。
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次回予告:政府支出の“限界”とは?──インフレと信用のコントロール
次回は、通貨発行に「限度はないのか?」という疑問に答える記事をお届けします。
• どこまで通貨を発行しても大丈夫なのか?
• インフレ時のブレーキのかけかたとは?
• MMTにおける“責任ある財政政策”とは?
この問いに答えることで、「政府は何でもできる」という誤解も、よりバランスのとれた理解に近づくことができるはずです。第3回目に続く。