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[シリーズ第6回目]
通貨発行と「地域再生」──中央集権を超えて、地方は立ち上がれるか?

地方の疲弊と中央依存の構造
日本の多くの地方自治体は、少子高齢化と人口流出、産業の空洞化に直面している。地域経済の衰退は、行政サービスの縮小やインフラの老朽化を招き、ますます若者を都市部へと押し出している。
この悪循環の根底には、地方財政が中央政府の交付税や補助金に依存する構造がある。地方は税収を失い、政策の自由度も奪われ、主体的な地域経営が難しくなっている。
中央集権型の限界と「分権」の可能性
戦後日本は中央集権型の高度経済成長によって国家としての成功を収めたが、その仕組みは今日の人口構造や経済実態と乖離している。
今や「全国一律」の政策では地域の多様な課題に対応しきれない。地方創生が叫ばれて久しいが、実質的な権限移譲や財源の自立には至っていない。
分権化とは単なる「制度」の話ではない。地方住民の暮らしと尊厳を守る、民主主義の本質的な課題である。
通貨発行という視点から見る「地方再生」
ここで注目したいのが「通貨発行権」に関する議論である。
通貨とは、国が債務を通じて未来の信用を担保に発行するものだ。財源とは、これまで繰り返し述べてきたように、「金庫にあるお金」ではなく、「政府が信用のもとで創り出す能力」と見るべきである。
この原則に立ち返れば、地方でも同様に、信用と交換の仕組みを用いて独自の「経済圏」を立ち上げることが可能となる。すでに一部では、地域通貨や地域商品券、互助経済などの実験が始まっている。
地域通貨と信用創造の可能性
たとえば、住民による福祉・介護・農業支援などの活動に報酬を与える「地域通貨」が導入されれば、それは新たな経済活動を喚起する。銀行が預金の信用創造を行うように、地方も「人間関係と信頼」に基づいて経済を再生できる。
これは国家による法定通貨とは異なる「信用の補完的ネットワーク」であり、財源の不足を実質的に補う役割を果たす。
「自立した地域経済圏」を夢想ではなく現実に
もちろん、法制度や中央政府との調整、通貨の信認といった課題は多い。だが、方向性として「中央依存ではなく、地域の潜在力を活かす仕組みづくり」は十分に可能であり、今後の日本社会にとって不可欠である。
地方は決して「役に立たない場所」ではない。それどころか、中央の論理では十分に活かしきれない資源や知恵が、豊かに眠っている場所である。地域の風土や文化、人々のつながりといった文脈を踏まえれば、こうした「見えにくい価値」は地方活性化の大きな原動力となり得る。
まとめ──地域に眠る「地方創生」の時代

地方の再生に必要なのは、補助金でも、外部企業の誘致でもない。
「そこに暮らす人びと自身が、自らの地域に価値を見出し、未来を創る力を信じられるかどうか」である。
通貨発行という視点は、国家の金融政策だけでなく、わたしたち一人ひとりが「信用を生み出す存在」であることを教えてくれる。
今こそ、地方が立ち上がる時である。
中央を超えて、自らの足で立つという選択が、未来を変える鍵となる。
次回第7回目は、全体のまとめ記事となります。ご参考にされてください。
最終回へ続く