短編小説:八十歳の入学式
私が通信制高校に入学したのは、八十歳を目前にした春だった。
桜が咲いていた。駅から学校までの坂道を、私はゆっくり歩いていた。
正直に言えば、少し恥ずかしかった。
周囲の学生は、ほとんどが十代である。孫のような年齢だ。
校門の前で、私は一度立ち止まった。
「本当にここでいいのだろうか」
そんな言葉が、頭の中に浮かんだ。
だが同時に、別の声も聞こえた。
「もう一度、学びたいと思ったではないか」
私は深呼吸をして、校門をくぐった。
教室には、二十人ほどの学生がいた。
スマートフォンを見ている者、静かにノートを開いている者、誰かと小声で話している者。
私が入ると、数人がちらりとこちらを見た。
その視線は、決して冷たいものではなかった。
ただ、少し不思議そうな顔だった。
私は一番後ろの席に座った。
黒板の上には、白い字でこう書かれていた。
「公共 第一回授業」
若いころ、私はほとんど勉強をしなかった。
働くことばかりで、学校というものから遠ざかっていた。
しかし八十歳になって、なぜかもう一度本を読みたくなった。
理由は、自分でもよく分からない。
ただ、人生の最後に、もう一度「知る」ということを味わいたかったのである。
授業が始まった。
教師はまだ三十代くらいの若い先生だった。
黒板にこう書いた。
「人間とは社会的動物である」
その言葉を見たとき、私は少し笑ってしまった。
長い人生を生きてきて、ようやくその意味が少し分かるようになった気がしたからだ。
休み時間。
一人の男子学生が近づいてきた。
「すみません」
私は顔を上げた。
「はい?」
彼は少し緊張した様子で言った。
「すごいですね。どうして入学したんですか?」
私は少し考えてから答えた。
「まだ知らないことが多いと思ったからです」
彼は目を丸くした。
「八十歳で、ですか?」
私は笑った。
「八十年も生きたのに、知らないことだらけなんですよ」
彼は少し考えてから言った。
「なんか、いいですね」
その日の帰り道。
朝と同じ坂道を、私はゆっくり降りていた。
しかし、朝とは少し違っていた。
胸の奥に、小さな灯りがともっていた。
それは、若いころに感じていたものに少し似ていた。
未来というものが、まだどこかにあるような感覚である。
私は空を見上げた。
桜の花びらが、風に舞っていた。
八十歳でも、春はちゃんとやって来る。
そう思った。
▶︎健康記録 今朝の体調 70/100 深夜覚醒回数 3
▼HbA1cや生活習慣病の各種検査をしてくれる場所候補、これができれば自己管理も可能か。

▶︎食事療法とレシピ ‖
・朝食‖ ロカボ食
・昼食‖作置作業中に軽い昼食 ‖ 済
→ 眠くなってきたタイミングで買い物に出てみた。
・夕食‖日高屋で補食。
・間食‖
▶︎運動 ウォーキング>5000+筋トレ ‖ 済
▶︎高活・老活・子活・猫活・社活
→初の短編小説掲載、長編はまだ無理だけれども、本当は長編を書きたい。
▶︎その他

